悪徳業者が多い外壁塗装業界。
その中でも、実に消費者の心理を上手にくすぐる手口が「モニター商法」です。
古典的な悪徳商法の手口ですが、いまだに被害が途絶えることのない、悪徳業者としては王道中の王道とも呼べるモニター商法について解説しましょう。
モニター商法の手口
まずは「モニター商法」というものがどんな手口なのかを解説していきましょう。
モニター商法は突然やってくる!
自宅には自分のほかに誰もいない平日の午後。
家事も終えてゆっくりと過ごす主婦の至福のひと時に、モニター商法は突然とやってきます。
「ピンポーン」というチャイムで玄関を開けると、スーツ姿でニコニコと好印象な営業マン風の男性。
なんのセールスだろうと思っていると

私、住宅の塗り替えをオススメしている業者の者です。
実は、この度こちらの地域にも営業を拡大することになったのですが、いまだに実績不足のため知名度も低いんです。
そこで、おたくを「モニター」として塗り替えをさせてもらい、当社の外壁塗装の素晴らしさをアピールする広告塔になって頂きたいのです。
とのこと。
どうやら外壁塗装の営業マンのようですが、今のところマイホームの塗り替えなんて頭になかったので「どうやって帰ってもらおうかな…」と思案していると、さらに営業マンは被せてきます。

今、表の通りからおたくを拝見したんですけど…
大変申し上げにくいのですが、外壁や屋根の塗装がすでに限界に達している様子です。
このままだと、住宅自体が劣化して数年のうちに外壁はヒビだらけ、屋根からは雨漏りすることは間違いありませんよ。
「え?ホントに?」と不安を感じてしまったら、すでに営業マンの思うツボです。

実はこの地域で限定1棟だけ、モニター価格で外壁塗装の代金を半額にするキャンペーンをやっているんです。
しかもこのキャンペーンで工事をすれば、足場代と高圧洗浄代も無料でサービスしちゃいます。
この先のおたくにもお伺いする予定なので、そちらで決まってしまうと半額キャンペーンの席は埋まってしまうんですけど、これをご縁と考えてまずはカンタンに見積りだけでもさせてもらえませんか?
今すぐに「仮契約」の書類だけでもサインを頂いておけば、半額キャンペーンの席は予約として確保しておきますよ。
心揺れ動かされるセールストークに「仮契約だし、旦那がダメって言ったら断れるからサインくらいならしちゃおうかな」とサインをしてしまうあなた。
翌日、同じ営業マンがやってきて渡された見積り書の工事価格は180万円。
一般的な二階建て住宅の相場は100万円前後ですが、外壁塗装の相場を知らないあなたは見積り書の最後が
- 足場代 0円
- 高圧洗浄代 0円
- 諸経費金額 360万円
- モニター割引(50%) 180万円
- お支払い金額 180万円
と記載されているのを見て「ホントに半額にしてくれてる!」とご満悦になってしまいます。
これがモニター商法の一連の流れです。
流れをまとめてみると、
- ①事前のアポイントやダイレクトメールの送付などはなく、突然、営業マンがやってくる
- ②「モニターを探しています」と言って話の敷居を下げる
- ③「おたくの外壁・屋根は劣化しています」と不安をあおる
- ④「モニター価格です」と大幅な割引をアピールする
- ⑤「足場代は無料」「高圧洗浄代も無料」でさらにおトク感をアップさせる
- ⑥「モニター価格は今日まで」「すぐに席は埋まる」と焦らせる
- ⑦「見積りだけでも」「予約だけでも」と言って即決を迫り囲い込む
という流れになります。
モニター商法の営業マン、正体は?
「外壁塗装をモニター価格の半額で」なんて美味しい話を用意するモニター商法ですが、もちろん、本当に半額になるわけではありません。
美容院・エステ・フィットネスクラブなど、モニターを活用して集客アップをはかる業態は数多く存在しますが、マイホームの外壁塗装で通りがかりの人に
「あのおウチの塗装、ステキね!どこの業者が塗装したのかしら?」
なんてアピールが効いて工事契約に結びついたという事例はほとんど存在しません。
外壁塗装の業者選びをしている人がわざわざその住宅を見学に行くことも、まず有り得ません。
しかも「すぐに決めて欲しい」「まずは仮契約を」と囲い込みをするような外壁塗装業者は、優良な業者だと言えません。
本当に優良な外壁塗装業者は「他社さんの見積りとしっかり見比べて検討してください」と自社の見積り・技術・材料のチョイスに自信を持っている業者です。
モニター商法を使ってくる営業マンの正体は、営業だけを仕事にしている「営業会社」の社員です。
外壁塗装に専念している営業会社があれば、手広く金になるなら何でも営業するという雑食系の営業会社もあります。
「ウチの職人」なんて言葉も登場してきますが、もちろんお抱えの職人なんていません。
付き合いのある塗装業者に下請けで流すだけ。
ということは、下請けの塗装業者に支払う経費がかかるので、実際の相場の工事金額から半額にしてしまっては営業会社の儲けがないどころか赤字になってしまいます。
しかも下請けなので実際に施工した業者には保証の義務もなく、営業会社は情勢に応じてカンタンに会社を閉鎖して別会社として活動するので、数年後にトラブルが起きても保証はまず受けられません。
- 半額にします
- 100万円引きです
なんてとんでもない値引きを提示されても、これはただのリップサービス。
実際は相場程度か、それ以上の金額になっている上に何の保証もないので「美味しい話だ!」と飛びついてはいけません。
本当に優良な外壁塗装業者でも「モニターとして」というセールストークを使うことがあります。ただし、どんなに割引きをしたとしても5〜10%が限界。これを超えると業者の取り分が激減してしまうので、半額や100万円引きなんて有り得ません。ホームページを開設していたり、広告を打つことが多い塗装業者なら「掲載させてもらうことを条件に」とモニター割引きをしてくれることがありますが、せいぜい数万円オフです。半額や100万円引きなどの大げさな割引きには100%ウラがあると疑いましょう。
即決は絶対NG!でも、もう契約してしまっていたら…?
モニター商法には「即決を迫る・囲い込みをする」という特徴があります。
なぜなら、モニター商法を使う悪徳業者は、他社の見積りと比較されることを恐れるからです。
優良な外壁塗装業者の見積りと比較すれば、割引き前のデタラメな見積りも、実際は半額どころか相場よりも高い工事金額になっていることも、全てバレてしまいます。
外壁塗装の営業マンが訪ねてきても、即決は絶対にNG。
これはたとえ優良な外壁塗装業者であっても同じことです。
しっかりと複数の業者の見積りを比較して、十分に納得した上で契約するべきです。
単に価格が安い業者を選ぶのではなく、同じ価格でも塗料のランクが高いとか、少し高くても一手間多い作業をしてくれているなど、価格と品質のバランスを総合的に判断しましょう。
もしモニター商法で契約してしまったら?
モニター商法という悪徳商法の手口があることを知らず、うっかりと悪徳業者の罠にかかって契約書類にサインをしてしまったという方は「クーリングオフ」を検討しましょう。
クーリングオフとは「冷静に考えた結果契約はなかったことにする」と通知し契約を解除する手続きです。
住宅リフォーム関連の訪問販売の場合、たとえ契約書類にサインしたり印鑑を押してしまっていても、契約から8日以内に相手に契約の解除を通知することでクーリングオフが適用されます。
クーリングオフには「契約から8日以内に相手方に解除を通知した」という事実を証明する必要があるので、必ず「内容証明郵便」を送付して通知の証拠を残すようにしましょう。
電話や面接だけでは証拠が残らないので後々にトラブルに発展するおそれがあります。
モニター商法で契約してしまった、しつこい訪問営業を受けて困っているなどのお悩みには「国民生活センター」が相談の窓口になっているので、こちらを活用しましょう。
相手に解除を通知したのに応じる姿勢を見せないなどのトラブルには、行政書士や弁護士に依頼して解決を図る必要があります。
トラブルがここまで複雑化するまでに、早めの相談・早めの対応を心がけましょう。
もちろん、ひとたびトラブルに巻き込まれてしまえば解決に手間がかかってしまうので、トラブルに巻き込まれないように「即決はNG!」を心がけましょう。
モニター商法の罠のまとめ
モニター商法は「美味しい話だ」と思わせておいて実は割引きでも何でもなく相場以上の工事金額を請求してくる悪徳商法です。
実質は下請けの塗装業社が施工するため、必ずしも品質の低い工事になるとは断言できませんが、工事金額に見合った仕上がりを期待することはできません。
ただし、モニター商法といえども「あの家はそろそろ外壁が痛んできているな」という目星を付けて声かけをしてくることは事実です。
モニター商法で外壁塗装工事の契約をしてしまうのはもったいないことですが、モニター商法の営業マンがやってきたことをきっかけにマイホームの塗り替えを考え始めるのは間違いではありません。
モニター商法でぼったくりやムダな中間マージンを支払うよりは、一括見積りサイトを活用して複数の優良業社から見積りを取り、できるだけ安く・高品質な外壁塗装工事を実現させましょう。
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